近年、Kubernetes環境におけるストレージ運用の最適化は、多くの運用担当者や開発者にとって重要な関心事となっています。私自身も例外ではなく、約3カ月前、Kubernetes上のストレージプロビジョナーを「NFS Subdirectory External Provisioner」から、より汎用的で最新の仕様である**CSIドライバー(Kubernetes CSI Driver)**へと移行しました。

当初は、「CSIドライバーは将来的な標準となるだろう」という期待と、拡張性のあるストレージ管理の実現を目指した意図からその選択を行いました。しかし、実際の運用において明らかとなった使い勝手やNFS上のディレクトリ構成の問題点を受け、再び「NFS Subdirectory External Provisioner」への回帰を決断しました。以下では、その理由を具体的に掘り下げてご紹介します。
Kubernetes NFS環境でのストレージプロビジョナー比較:CSIドライバーに感じた限界
KubernetesにおけるCSIドライバーの導入には多くのメリットがあります。たとえば、多様なストレージクラスに対応でき、動的プロビジョニングの自動化にも優れています。しかし、NFS(Network File System)をバックエンドとする構成では、以下の点で課題が浮き彫りになりました。
🧩 Helmリリース名がディレクトリに反映されない
CSIドライバーでは、NFS上に作成されるディレクトリ名にHelmリリース名などのコンテキスト情報が含まれず、どのリリースに対応するディレクトリなのかを判別しづらいという問題がありました。これにより、NFS上のディレクトリ管理が煩雑化し、特にプロジェクト数が増加する場面では大きな悩みの種となりました。
🗃 リソース削除時の自動アーカイブ機能がない
NFS Subdirectory External Provisionerには、Helmリリースを削除した際にディレクトリ名を自動でarchived-リリース名
とリネームしてくれる便利な機能があります。このアーカイブ機能により、使用済みのディレクトリを一目で判別できるため、運用上のミスや不要なディレクトリの放置を回避できます。一方でCSIドライバーにはこうした機能が存在せず、整理・削除の判断が手動にならざるを得ませんでした。
NFS Subdirectory External Provisionerの再評価:ストレージ運用の可視性と管理効率の向上
今回の見直しを通じて、NFS Subdirectory External Provisionerの持つシンプルさと現場での有用性を再認識することになりました。とくに以下の点が、Kubernetes上のNFSディレクトリ管理を大幅に改善すると感じています。
- Helmリリース名の自動反映により、トレーサビリティが確保できる
- アーカイブによる削除リソースの可視化が、メンテナンス性を向上させる
- プロジェクト数が増えても、ディレクトリ構造が乱れにくい
これらの特徴は、Kubernetesのストレージ管理を効率化する上で非常に重要であり、単なるプロビジョナーの選定以上に、NFS上の構造管理を最適化する戦略的な判断であると捉えています。
今後を見据えた選定:Kubernetesのストレージ運用における柔軟性と実用性の両立
Kubernetes環境におけるNFSストレージの運用は、プロジェクトの成長とともにますます複雑化します。だからこそ、ディレクトリ単位で明確にリソースを把握・管理できる仕組みの重要性は今後ますます高まると考えられます。そうしたなかで、単に「最新技術だから」と選ぶのではなく、実運用における可視性・整合性・効率性を重視したツール選定が求められます。
今回のNFS Subdirectory External Provisionerへの回帰は、こうした観点に基づいた実践的な判断です。これにより、今後の拡張にも耐えうるKubernetesストレージ運用の基盤を強固に整備できたと確信しています。