皆さん、日本の東西の移動、例えば東京⇔関西、中四国の移動って、何が便利でしょうか?
関西圏だと、新幹線と回答される方がダントツ多いと思います。空港が近いなら、飛行機もいいですよね。私もどちらかと言えば、飛行機派です。でも、勤務後などに移動して前泊をしなければならないパターンを考えると、この第3の選択肢である「サンライズ出雲・瀬戸」もいいなと思ったので、紹介させて頂きます。
サンライズ出雲およびサンライズ瀬戸は、日本で運行される唯一の夜行の寝台定期列車です。ブルートレインやカシオペアも含め夜行列車では一般的に機関車が客車を引っ張る形ですが、サンライズには機関車は連結されません。客車にモーターが埋め込まれている寝台列車で、Sunrise Express (サンライズエクスプレス)と描かれた専用の285系電車で運行されています。機関車が連結されない寝台列車は、世界的にも非常に珍しい部類です。
この列車は、鉄道ファンや観光客だけでなく、ビジネス旅行者にとって非常に人気で、週末や祝前日の便などは発売と同時に売り切れてしまう事が殆どです。
最大のメリットは、時間を有効に活用できる利便性があります。インバウンドが戻ってきたせいか、大都会を中心にホテル代が爆騰している昨今、夜行列車はホテル代を節約しつつ、飛行機の最終便より遅くに出発するものの、翌朝には飛行機の始発便より早く目的地に到着できるという利点があります。
コンテンツ
サンライズ出雲・サンライズ瀬戸の基本情報
サンライズ出雲およびサンライズ瀬戸は、JR東海とJR西日本が共同で運行していて、1998年7月10日に運行を開始しました。
サンライズ出雲は、東京駅と島根県の出雲市駅を結ぶ全長約953キロメートルを運行しています。同様にサンライズ瀬戸は、東京駅から香川県の高松駅までの約804キロメートルの運行です。
出発地を夜に出発し、翌朝に目的地に到着します。途中停車駅には、横浜、大阪、神戸、姫路、岡山などの主要都市が含まれます。
サンライズ出雲、瀬戸ともに、各7両編成を併結した14両の長編成です。東京~岡山間では、サンライズ出雲とサンライズ瀬戸をともに併結して運転し、上り下りを問わず、進行方向前方がサンライズ瀬戸、後方がサンライズ出雲です。途中の岡山で、上りは連結、下りは切り離しを行います。
なお、夏の繁忙期には、臨時のサンライズ出雲号が単独で運行されます。このサンライズ出雲91号、92号は、片道16時間半と通常よりも運転時間が長く、非常に珍しい運転です。
なお、サンライズ瀬戸が先頭で運行されるためか、JR公式文などではサンライズ瀬戸・出雲という表記が多いですが、このページでは、寝台特急サンライズと記載させて頂きます。
寝台特急サンライズの運行ルートと主要停車駅
寝台特急サンライズは、東京駅を出発し、横浜、姫路、岡山などの主要都市を経由します。岡山駅で分割され、一方は四国の高松駅へ、もう一方は山陰地方の出雲市駅へと向かいます。このため、寝台特急サンライズは異なる2つの目的地にアクセス可能です。
寝台特急サンライズの費用
寝台特急サンライズを利用するには、利用する区間の乗車券の他、特急券と寝台券が必要です。
🎫
乗車券
+
🚝
特急券
+
🛏️
寝台券
(又は座席指定券)
特急料金は新幹線よりお得!
別途、寝台券または座席指定券を使用しますので、特急券は自由席料金を適用します。在来線の特急料金は、JR北海道を省くJR全社で共通になっています。
在来線のA特急料金表の抜粋
営業キロ | 401~600キロ | 601キロ以上 |
---|---|---|
特急料金(自由席) | 2,960円 | 3,300円 |
意外と知られていないのですが、在来線の特急券と新幹線の特急券では価格が異なり、寝台特急サンライズで適用される在来線のA特急料金は、新幹線の同区間より安くなります。なお、新幹線の特急料金は、距離制ではなく駅間ごとで設定されており、同じ距離であっても区間によって価格が異なります。
東京発着の場合の在来線と新幹線の特急料金のみの比較
利用区間(東京⇔) | 東京からの距離 | 在来線(自由席) | 新幹線(自由席) |
---|---|---|---|
大阪 (新大阪) | 556.4 (552.6) km | 2,960円 | 4,960円 |
三ノ宮 (新神戸) | 587 (589.5) km | 2,960円 | 4,960円 |
姫路 | 644.3 km | 3,300円 | 5,390円 |
岡山 | 732.9 km | 3,300円 | 5,930円 |
上記は東京発着の場合の比較表です。なお、通常ダイヤで東京発の下り利用の場合は、大阪、三ノ宮で下車する事は出来ませんのでご注意ください。(繁忙期にのみ運行される臨時サンライズ号では乗降可能な停車駅となる場合が多いです。)
横浜発着で利用する場合の特急料金は、東京⇔横浜の駅間距離が28.8kmのため、三ノ宮が3,300円区間になりますが、それ以外は東京発着と同額です。(静岡県内で乗降する場合を省く)
寝台券について
寝台券の価格は、利用する部屋により価格が異なります。なお、ノビノビ座席を利用する場合は、寝台券ではなく指定席券になります。
寝台料金表
部屋の種類 | 種別 | 1人あたりの金額 |
---|---|---|
シングルデラックス | A寝台 | 13,980円 |
シングルツイン | B寝台 | 9,600円 |
シングル | B寝台 | 7,700円 |
ソロ | B寝台 | 6,600円 |
サンライズツイン (2名単位での販売) | B寝台 | 7,700円 |
ノビノビ座席 | 指定席 | 閑散期:330円 通常期:530円 繁忙期:730円 超繫忙期:930円 |
子供は、添い寝が可能!
未就学児を同伴する場合、乗車券などは通常のJR利用と同じルールが適用されますが、寝台利用に関しては乗車券とは若干異なった扱いになります。
乗車券・特急券は幼児まで無料
通常のJRの乗車券・特急券のルールは、大人1人につき、幼児2人までが無賃です。しかし、サンライズの寝台利用に関しては、大人1人につき小児1人までが添い寝可能となっています。大人が同伴しない場合、または無料範囲を超える人数の場合は、幼児であっても小児の切符が必要になります。
寝台は小児まで無料で添い寝
寝台券の無賃扱いに関しては、未就学児(幼稚園生)である幼児だけでなく、小学生である小児にも拡大されています。但し、小児の場合は切符が必要な年齢ですので、乗車券と特急券(自由席)は購入が必要になります。
寝台は狭い!
寝台で添い寝を考えている方は、ベッド幅が狭いという点には十分に注意しましょう。お子様が小柄なら問題ないかもしれませんが、小学生くらいになると、普通のシングルベッドでも一緒に寝るのは窮屈になってきます。それよりも更に狭い寝台で、一緒に寝られるのか、ご自宅で実験してみてから利用するのがいいかもしれません。
各寝台のベッド幅の比較
部屋の種類 | ベッド幅 |
---|---|
シングルデラックス | 約85cm |
シングルツイン | 約70cm |
シングル | 約70cm (足元側は約60cm) |
ソロ | 約70cm (足元側は約55cm) |
サンライズツイン | 約75cm (足元側は約60cm) |
ノビノビ座席 | 約85cm |
一般的なご自宅のベッドや敷布団 | 約100cm |
寝台特急サンライズの寝台
他の寝台列車と同様に、特急サンライズでも多様な寝台が用意されています。なお、A寝台は1等車つまりグリーン車相当、B寝台は2等で普通車です。
A寝台-シングルデラックス
シングルデラックスは、特急サンライズで最も豪華な個室寝台です。出雲と瀬戸にそれぞれ6室しか設定がないプレミアムルームです。広々とした空間には、ベッド、デスク、椅子、15Aまで使えるコンセント、そして専用の洗面台が備えられてあり、シーツが敷かれたベッドに、枕、薄めの掛布団、浴衣もあります。
シングルデラックスの利用者には、フェイスタオルなどの入浴セットにシャワーカードも加えた専用のアメニティが提供され、快適な夜を過ごすことができます。フェイスタオルなどの持ち帰ることができるサンライズのロゴ入りアメニティは、フリマ等で転売されるほどの人気ぶりです。
B寝台-シングル
シングルは、一番設定数が多い寝台で、ベッドだけのシンプルな一人用の個室です。1Aのコンセント、ノートパソコンも置けそうなテーブルと若干の荷物が置けるスペースがあり、プライバシーと快適さが確保されています。シーツが敷かれたベッドに、枕、毛布、浴衣があります。
1階の寝台と2階の寝台に加え、1階と2階に分かれる前の乗降扉横の寝台の3種類があります。2階の寝台は、窓が湾曲しており、夜空を眺める事ができます。部屋数が非常に少ない乗降扉横の寝台は、天井が非常に高くなっていますが、停車駅では乗降客の物音が気になるそうです。
B寝台-ソロ
ソロは、シングルよりもさらにコンパクトな一人用の個室です。モーター車に設置されているため、シングルよりも空間が確保できない理由から、天井が低めで窮屈ですがスマートに設計されています。1Aのコンセントもありますが、寝るだけの空間と考えた方が良いでしょう。シーツが敷かれたベッドに、枕、毛布、浴衣があります。
上段の寝台と下段の寝台の2種類があります。どちらもベッドは奥側が狭くなっている形状です。下りの場合は下段、上りの場合は上段であれば、ベッドの進行方向側が狭くなります。座席番号は、上段は偶数、下段が奇数です。
B寝台-サンライズツイン
シングルデラックスの下の階に設定された4部屋しかない2人用個室です。通路を挟んだ両側にベッドが配置され、シングルと比較すると広めの空間が確保されています。シーツが敷かれたベッドには、枕、毛布、浴衣があります。なお、2人部屋ですが、コンセントは1Aが1つのみです。
2人利用が原則のため、寝台券は2人分セットでの販売です。また、全ての部屋が1階のため、車窓はあまり期待できません。
B寝台-シングルツイン
乗降扉横の天井が高いシングルの寝台に、跳ね上げ式のベッドと階段を増設したタイプの寝台です。その名の通り、シングルとしての1人利用も、ツインとしての2人利用も可能です。シーツが敷かれたベッドには、枕、毛布、浴衣があります。
下段のベッドは、格納してソファ席にする事が可能です。
ノビノビ座席
寝台券が必要ないため、特急券と指定席料金のみで利用が可能です。
ノビノビ座席は、座席という名称ですが、座席の設置はありません。上段と下段に分かれたカーペット敷きのフラットスペースで、ポット型ではないカプセルホテルのような感じです。通路とは反対側の窓側を頭にして寝る想定で、窓付近には隣との仕切り版が設置されています。
車両の片側の端が通路になっており、残りは1人分の指定席です。特急列車で考えれば、通常2席+通路+2席ですが、ノビノビ座席では通路+実質4席分が1人席といったところです。大柄でなければ結構広く感じますし、座席の出入口付近に荷物を置いても、長身の方でなければ気になりません。通路に出る部分にカーテンがありますが、隣席との境にカーテン等の仕切りはありません。
シーツなのかなと思うような薄い毛布のみが置かれています。夏場でも意外と空調がきつく感じる事があるため、防寒対策と枕代わりの物を持参した方がよいかと思います。
コンセントは座席エリア内にはありませんが、通路の足元に何ヵ所か設置があり、そこで充電している人を見かけました。ただ、行き来する人が意外と多いため、盗難のほか、蹴られたり、踏まれたり、荷物などが当たって破損するリスクが高い気がします。
寝台特急サンライズのパブリックスペースとアメニティ
サンライズ出雲には、快適な旅をサポートするためのパブリックスペースとアメニティが充実しています。残念ながら、食堂車はありませんので、食料が必要な方は予め用意しておく必要があります。
ミニラウンジ
3号車と10号車にあるミニラウンジには、通路を挟んだ両側に4席ずつのカウンターが設置されています。大きな窓からは外の景色を楽しむことができ、特に朝焼けの時間帯には美しい風景が広がります。
また、このエリアに飲料自販機とシャワーカードの販売機、共用のシャワー室があります。
シャワー室
A寝台に乗車する場合を省き、シャワールームは有料です。ミニラウンジにある販売機でシャワーカードを購入すると利用ができます。シャワールームには、シャンプー、ボディソープが備え付けがありますが、タオルは車内での販売や貸し出しがありませんので、事前に用意しておきましょう。出雲市駅や高松駅の売店ではタオルのほか、歯ブラシなどのお風呂セットが入ったアメニティセットが販売されているそうです。
シャワーカードを入手した場合は、乗車中の好きなタイミングで1回のみシャワーを利用できます。シャワーの利用時間は6分です。お湯を止める事で、6分カウントは一時停止できます。なお、シャワーカードを挿入した段階で、カードは無効になるため、カウント時間が残っている場合でも、次に繰越す事はできません。
A寝台である、シングルデラックス利用の場合は、検札の際に無料でシャワーカードを貰う事が出来ます。このシャワーカードは、シングルデラックス専用のシャワー室で利用可能です。確実にシャワーを浴びたい方は、シングルデラックスを予約しましょう。
シャワーカードは乗車後にのみ購入可能です。なお、1編成あたり20人分程度しか販売がないそうで、争奪戦になります。大抵は始発駅の発車前後に売り切れてしまいます。必要な方は、販売機が近い4号車または11号車の部分に始発駅で入線前から並びましょう。なお、下り始発の東京駅では、発車30分以上前に大行列ができるため、前方に並んでいない限り、並んでも購入ができないそうです。
乗ってみないとシャワー利用が出来るか分からないのであれば、初めから諦めて乗車駅周辺のネットカフェをはじめとするシャワー設備を利用する方が賢明かもしれません。東京駅周辺では、「東京VIPラウンジ」や「MARUNOUCHI Bike&Run」にて千円前後でシャワーが利用できるそうです。
首都圏側での私のお勧めは、JR蒲田駅周辺の蒲田温泉です。東京独特の黒湯の温泉を銭湯価格で満喫できます。黒湯温泉は何店舗かあり、駅から少し離れている銭湯もありますが、どれも十分に徒歩圏内です。早朝営業はやってない様で、上りで利用した際は、横浜で下車した後、京浜東北線で蒲田に向かい、駅前のマクドナルドで朝食を食べつつ時間を潰してから朝風呂に向かいました。
特急サンライズを利用する上で気を付けたい事
メリットばかり書きましたが、最後にデメリットも記載しておきたいと思います。
最近のJRは積極的に計画運休をする傾向にあります。実際の雨量にかかわらず、大雨などの警報が出た際は、早い段階から運休をアナウンスしています。また「南海トラフ地震臨時情報」が政府から発出された際も、お盆期間中で超繁忙期にも関わらず、サンライズ号を1週間にわたり運休させました。
また注意が必要なのは、寝台特急サンライズは、サンライズ出雲とサンライズ瀬戸のセットで運行しています。そのため、山陰地方での大雪でもサンライズ瀬戸までもが運休となり、瀬戸大橋の強風でも、サンライズ出雲までもが運休になっています。最近のサンライズ出雲が廃車予定の381系やくもと衝突事故を起こした際を省き、通常では片方のみの運用は行っていない様です。
一斉発売の1か月前では、乗車日の天候は分かりませんが、乗車の際は、運休になった場合のバックアッププランも、考えて計画を立てましょう。